今回、長柄町の「焼締陶 六地蔵窯(やきしめとう ろくじぞうがま)」で行われていた窯炊きの様子を取材しましたのでご紹介します。六地蔵窯の代表の安田さんは昨日の午後9:00からの夜間作業明けにもかかわらず、取材にご協力くださいましたこと、感謝申し上げます。

■焼締陶の窯炊き

訪問したのは8月8日午前8:00でしたが、朝にもかかわらず木陰にいても真夏の太陽の暑さを感じてしまう、そんな陽気の中で窯炊きが行われていました。
7月30日に行われた火入れから今日で10日目。安田さん、お弟子さん、そして合宿参加で手伝いをする中学生2名が作業を行っていました。窯の内部温度は1000℃近くに達し、窯から2m離れた場所でもそこに留まることができない程の熱さです。

安田さんのつくる焼締陶の特長は、釉薬を使わず絵付けもせずに、「煙」と「炎」と「灰」だけで焼き上げるのが特長です。そして今が焼締陶の色を着ける最適な工程にあるそうです。色着けのために一定の時間間隔で不完全燃焼を発生させて、窯の中にたくさんの煙が充満するような作業が行われていました。

■今回の作品への想い

今回の窯には、安田さんが心を込めた新作が約3,000点入っており、作品の構成としては約6割が食器類、4割が花器・酒器・茶器・小物類などとなっているそうです。

特に花器については、長柄町の土を器の表面に薄く延ばして「千葉の陶器」をアピールする意欲作となっています。

安田さんは、「お客様には普段使いの器は本物を使って頂きたい。」という想いがあります。その想いを実現するために、土づくり・器の造形・窯炊き・仕上げにこだわり、自然で素朴な色調と変化にとんだ肌ざわり、さらに実用性を兼ね備えた本物の焼き物を創り出すことに心血を注いでいるそうです。

■協力者への感謝

現在の安田さんの窯炊きは1年に1回。その窯炊きに1年間の売上の全てがかかっている正に「命を賭けた作業」です。
そして、窯炊きを行う約2週間は、24時間体制の温度管理が必要であり、ほんのわずかでも火加減を誤れば、窯の全ての作品をダメにしてしまうリスクと常に向き合う真剣勝負なのです。

窯炊きでは毎回手伝ってくれる年長者が数人いるそうですが、今回は20代の弟子1人をはじめに、中学生2名の若い力に支えられる窯炊きとなっています。中学生2名は手伝いを始めてから9日目になるそうで、安田さんの指示にテキパキと対応しており、「窯炊きが完了するまで安田さんの手伝いをします。」と言っていました。

そのように厳しく繊細な窯炊きも、安田さん1人だけでは行うことができず、協力者の存在が必須です。安田さんは「窯炊きの協力者には”自分の命を預ける”くらいの気持ちで向き合っており、それに応えてくれる人たちに深く大きな感謝の気持ちで胸がいっぱいです。」と打ち明けてくれました。そして、「長くやっていると協力者も高齢になり卒業する人もいる中、今回のような若い人たちが新たに参加くださる、このような「ご縁」に感謝です。」と付け加えてくださいました。

このように優しく大きな心を持ち、陶芸家としての安田さんの魅力にひかれて、作業の協力や差し入れをしてくださる人などが、まわりから集まる様子を見ていると、身近な人々があたたかい心でお互いを見守りながら生活する原点を見たように感じました。

■今後の予定

今後の予定としては、窯炊きは8月中旬に完了、その後数日かけて窯の温度を下げてから窯出しを行い、仕上げの工程を経て完成となるそうです。順調に進めば、以下のように新作の展示を行う予定だそうです。

①9月下旬から10月初旬に、六地蔵窯の展示室で行う「窯出し陶房展」を開始

②11月中旬から12月初旬に、「カフェ&ギャラリー温々(ぬくぬく)」で行う「安田裕康 焼締陶展」を予定

※その他にも展示会を検討中

詳細は、時期をみながらfacebookでお知らせするそうなのでチェック頂き、是非足をお運びください。